2018-01-01から1年間の記事一覧

自分を否定したとして それすら自分の声だ—後編

美容室の安楽椅子ほど悪趣味でバカげた祭壇はない。「スタイリングチェア」とかいう大袈裟なシートに座らされ、目の前には大きな鏡が見たくもない自分の顔を大袈裟に映し出している。ブースの隅にはありがちな緑の観葉植物が置かれていて、側のラックにはよ…

『豚愛』

特段歩くことが好きというわけでもない。電車と徒歩だと断然電車を選ぶし、1つ前のバス停で降りて健康を気遣うような年頃でもない。ただし「なんとなく世界と噛み合ってないな」という違和感が大きくなると、とりあえず街中を歩き回ることにしている。歩きな…

走り切った三年半

(3/4) 遂に引退しました。5日連続で更新してきた部活引退シリーズもこれで終わりです。質問コーナー、後輩への軽いメッセージ、最後に改めて3年半を振り返ります。 質問コーナー ▶︎在部中のトレーニング量は?いつ頃からパルクール的なのに興味が? 部活で十…

走り続けて三年半—後編

(2/4) 学参時代(2年1月~3年12月) 1年のうちで最も練習量が多くなる9月を100とすると、例年1~3月は50とか60くらいの強度だと思うのだけれど、今年は1月から80くらいの強度が襲いかかってきた。というのも、3月には日本代表選考会があり、ぼくは男子展開チー…

走り続けて三年半—前編

(1/4) 大学生活はまだ終わってはいないけれど、大学に入学して今に至るまで、ずっと傍らには「躰道部」という部活が寄り添い続けていました。3年半もアホみたいにエネルギーを注ぎ込んだ部活についてこんな文章で表現できると言ったらウソになるけれども、少…

僕ら全員演じていたんだ

9:30 朝起きてバイトに行く支度をする。このバイトを始めてもうすぐ5年経つ。バイトに行くために起きたのか、起きるためにバイトに行ってるのかよく分からなくなってきた。 10:54 「縮尺塾」で個人指導をしている。受け持っている生徒はあまり素直ではなく、…

“ジブン”と言えないままで

ええ、そうです、よくお分かりですね。わたしはスーツが苦手なんです。 いえ、特に大きな理由がパッと思いつくわけでもないんですけど……。ただ、特にスラックスなんかは太ももにべったり布がまとわりつくような感覚が気持ち悪いなと思うことはありますし、何…

思考を休めるな

「OSはすぐアップデートするの。新しい方が良いじゃん」という恋人の声を聞いて以来、自室の地下に密かに監禁牢を作り始めている。 好きなアーティストは確かにいる。けれども、作品の中でどれが好きかと問われると上手く答えられないことが多い。そして気ま…

はち切れそうな思いを紡げ

部活人生最後の全日本大会で優勝した。言ってしまえばそれだけのことだけれど、ぼく個人のストーリーとしては最高の幕引きを迎えることが出来たように思う。あ、まだ引退させてもらえないんですが。 思い返せば、この部活に入ろうと思ったきっかけは新歓PVの…

東京 PM9:00

渋谷のサンマルクカフェで、ブレンドコーヒーのカップとレシートを受け取る。後輩の待つ席に着く。 「インスタグラムってどう思います?」 うーん。マノヴィッチの邦訳『インスタグラムと現代視覚文化論』は読もうと思ったきりで読んでないな。一応アカウン…

終生に及んで致し方ない防衛線

「ノリ」が苦手である。 周知の通り、常に境界線の外側から観察してしまう性格なのだ。ガヤガヤしている当の内輪にいても、常に心は外界に逃げ出してしまう。「醒めつつ淫すべし」とはよく言われるが、頭では分かっていても「淫する」ところまでなかなか身体…

自分を否定したとして それすら自分の声だ ——前編

誰にも語ったことのない、一番古い記憶の話をしよう。 初めて幼稚園に行った時のことである。多くの人が2年間通うところを小学校入学前の1年間しか通わなかったため、みんなより遅い途中入園ということだった。幼稚園という場所がどんなところなのかはあまり…

生涯とは長編作の映画みたいなもの

「一生忘れません」という言葉が好きではない。そう思っていたはずの事柄はほとんど、頭の中からするりと抜けだしてしまった。最近公開設定にしたInstagramの投稿に「展開8.8点は一生の宝物です」とコメントをつけておいたが、これも後ろに「まあ2年程度持て…

甘えんな でも甘味は好き

「甘いものが好き」という始まり方ではインスタにスイーツと自分とどちらを推したいのか分からないようなサブカルクソ女と間違われてしまうかもしれないが、甘いものが好きである。より正確には、甘いもの以外特段好きなものがないと言うべきか。好きな食べ…

【徹底解説】部活の夏合宿で全力で成長する方法

皆さんの部活にも合宿はありますか?夏合宿といえば、4泊5日の遠征で稽古に集中出来るまたとない機会ですよね!しかし、ただ過ごすだけの4泊5日と、成長を意識した4泊5日では大きな違いがあることをご存知でしょうか?この度は、この手の話が得意な筆者が「4…

それでもぼくらはトンネルで息を止める

「確率が1を超える」という事態が起きるとすれば、それは数学の採点バイト中に他ならない。単純作業の繰り返しで苦行だと思われがちな採点業務ではあるが、sinやcosの値が100に近づく者や線分の長さが虚数解になってしまう高校生との出会いは案外に魅力的で…

幼少年の僕達に 指差して笑われた

一人称に慣れない。 自分のことを「私」と指すのはなんとなく気恥ずかしさがあるし、「俺」と呼ぶのも変にカッコつけたような感じがある。講義で自分の意見を話す際には「僕」という人称を使っている気がするが、それもいまいち定かではない。どっかのギャル…

二十代 恥に気づいた人

自分の年齢が分からなくなることがある。確か21歳だった気がするんだけどもうそんなに年取ったんだっけ、と思うこともあれば、本当は22歳の誕生日を迎えていたような気もしてくる。こればかりは誰かに聞いて教えてもらうものでもないし、仮に聞いたところで…